シトロエンGS

↑2014年10月11日撮影(凱旋門よりルーブル美術館方面)

シトロエンGS
1970年代にシトロエン社がハイエンドモデルのDSと普及モデルの2CVの間を埋めるべく送り出した傑作のひとつ。
小型ボディにハイドロニューマティックサスペンション+空冷フラット4エンジンをインストールした独特な乗り味のクルマ。
しかし一般には故障の多さから敬遠され、少なくなりつつある不遇なクルマ。

技術者はどんな意図でこのクルマを設計したのか・・・?

エンジン、サスペンション、ボディからねじ一本に至るまで考えられていないものはないはず。
このブログは個人のユーザーである管理人の修理の記録とそれらの過程で見えてきた技術者の意図を考察するブログです。

2014/04/29

エンジン その3 Engine part3


水平対向エンジンを採用する前提とし空冷方式があったことは想像に容易い事実です。
縦置きでシリンダーに均等に冷却風を当て、ボンネット高を考慮すると水平対向しかありえない。

ポルシェもそうであったように基本的には空冷と相性が良いエンジン形式と言ってよいでしょう。
両バンク必要な腰上のパーツ点数は増えますが、水冷に関わる補機類が不要のため、ある程度は製造コストが相殺できたと思います。

水平対向エンジンが廃れてしまった理由はメンテナンスコストと水冷化だと考えています。
そもそも車上でコンロッド交換が不可能。(スバルは斜めに取りつけることで交換可能な技術を開発しましたが、シトロエンはそれならクランク一体にしてアセンブリで交換しようと発想の違いが面白いです。)
そして水冷化はエンジンレイアウトを自由にし、空調も格段に良くなった反面、部品点数が増えたことでそのままコストとしてメーカーに跳ね返った。

メーカーが言う低重心というのも、FF、RRともにオーバーハングにぶら下げざるを得ないことでトータルとしてどれほどのメリットが得られるのか?正直私は懐疑的に捉えています。
トラクションにはメリットとして働くでしょうが。

2014/04/20

マニュアルクランキング Manual cranking

【音量注意!!】PCからは動画が見れます。
GSのユニークな点として70~80年代当時のクルマでもハンドクランクを備えていたこと。
スターターモーターは輸入車の鬼門ですのでこれはありがたい装備。
バッテリートラブル含めた非常時に備えて練習しない手はないということでやってみました。

気温は12℃程度。イグニッションをオンにして、アクセルを数回ポンピング。
チョークを半分強引き、フロントに移動。
180°毎にどこかのシリンダーが上死点のはず。
クランク棒を挿して上死点を確かめたらエイっと回す。
3回目ぐらいで呆気なくスタート。

しかし、あくまで非常用として全くおすすめはしません。
ケッチンくらってどこかを破壊で済めばいいですが怪我する可能性もあり、動画を改めて見ると私のやり方は顔が近く危険。
人の助けを借りられるなら押しがけの方がずっと安全だと思います。

2014/04/19

光軸調整 Optical axis


予備検査での他の目的は光軸調整。
私は以前に、車高を規定値に合わせるため、前輪で15mm、後輪で8mm下げたので理論上若干の下向き加減が気になっていた部分でした。

基準値いっぱいでしたがこちらもOK。
基準値真ん中を探して慣れた整備士さんがその場で微調整してくれます。

イエローバルブ自体は年代的に問題がありませんがその発光量はどうでしょう。
これもしっかり基準以上の値が出てました。
イエローバルブでは光量不足で車検に落ちると耳にするのは、古いクルマですのでリフレクターの方に問題があるのではないかと思います。

ちなみに私は過去一度、Xmで光量不足を指摘され車検に落ちたがあります。
結露を乾かしてその日のうちに通すことはできたのですが、あの薄型デザインのために特殊なカッティングを採用したという割にドライビングライト無しにはとても郊外を走行することはできない代物でした。

排ガス予備検査 CO Mixture screw


旧車乗りにとって生命線でもある排ガスの基準。
この年代の車種は甘いとはいえCO4.5%以下、HC1200ppm以下でないと車検に通りません。
ましてこれらを希釈するエアポンプが作動していない状態です。

さて予備検査時のデータ。
CO8.7%
HC260ppm
アウト。猛毒な一酸化炭素をずいぶん撒き散らしていました。

検査ライン上で、奥まった場所のキャブCO調整ねじを回しますが、ちょっと締めたぐらいでは数値がほとんど変わらずグルグル締めます。
CO濃度は2%程度の基準値内まで下げることができました。
逆にHCが心配でしたがほとんど変動せず。

多少の調整で済むぐらい燃焼状態は良好。
キャブと点火系に問題は無いようです。
ひとつハードルをクリアしました。

2014/04/13

トー調整 Toe-in adjustment


車検の期限が迫ってきているので現状把握のため予備検査に行ってきました。
気になる点が幾つかあり、そのひとつがサイドスリップ。

どうも左に行きたがるクセがあり、原始的なメジャー方法で調整を行ってきました。
調整前トータルトーが5mm程度アウトだったものをトー0mmまで詰め、後は左右同じ分を右に向けていく。
また、トータルトーを合わせるの繰り返しでまっすぐ進むところを探す。

こんなアナログな方法で合わせたので、果たしてサイドスリップは基準値内なんでしょうか。
間違いなく不備を指摘されるだろうと思って臨んだ予備検査。
テスターの針はピクリともしません。
差は±0。合格です。

しかし、マニュアルではタイロッドエンドの調整ねじ部分でみる許容左右差は2mm以内だったと思いますが、真っ直ぐ進むところを探した結果、左右で基準を超える差が出ています。
GSはトー以外に調整できるアライメントは無く、厳密にセッティングするなら残る可能性はベアリングかもしれません。

2014/04/11

アルマイトミラー Anodic oxide coating mirror


曇ったグレーのGSのサイドミラー。
オリジナルデザインが秀逸でほとんどモディファイする必要のないGSにあって、安っぽく見えるのか時より上位のCX用のめっきミラーと交換されたりと人気がない。

これはアルミを酸化皮膜処理したものでご存知アルマイトの商標で親しまれています。我々世代の弁当箱はこれ。
アルミの表面をあえて画一的に酸化腐食(?)させ、見た目の向上と対腐食の両立を図ったもので相当の技術革新の賜物です。

住宅のサッシなどでもお馴染みで今日では世界的に広まっているベーシックな技術ですが、日本で発明されているのがポイントで歴史や仕組みを知るとオリジナルのミラーが魅力的に見えるから不思議。

R&Dは戦前の理研で当時は現在と比較にならない程の国粋の組織。
例の事件でずいぶんと信用が失われましたが、今後も新しいモノを生み出すことに期待します。

エコカー補助金 Scrap incentive


フランスでは2007年からエコカー購入や古いクルマの新車買い替えで1000ユーロの補助金を交付するボーナスペナルティ制度を導入。
目論み通り新車購入のインセンティブに繋がったようで、パリの街を埋め尽くす2CVやキャトルというのは今や昔の話です。

日本でも上限付きで2009年に登録から13年以上のクルマの買い替えに補助金を交付したことで、価格が25万円に満たないクルマは下取りに出すより、スクラップにした方がメリットとなり淘汰が進みました。
特にイタ・フラ製の下駄クルマはかなりの数を減らしたようです。
他にも登録からの経年に応じて段階的に税金が重くなる制度が取り入れられており、更に増税方向の議論があることは言うまでもありません。

新車購入が果たしてエコなのかは言及を避けますが、中古車購入には逆に所得税が経年的に減額されているので仕方が無いのでしょうか。
ガソリン税含む税制改革はクルマを趣味とする人々との根競べになりつつあります。
ただし、税金はともかく、オールドカーやヒストリックカーが嫌悪される社会にはならないよう我々も振る舞いには気をつけなければなりません。

2014/04/06

LHMポンプ T字ラバーブーツからの漏れ LHM leak


LHMポンプ周辺の漏れ。
GSでは頻度の高いものとしてポンプのT字のラバーブーツからの漏れがあります。
暖気運転中に下を覗くと、漏れ始めの最初の数滴を運良く発見できたのですが、このまま乗っていたらと思うとゾッとします。

クーリングファンの裏側にあたるためアクセスには基本フロントパネルやらバンパーやら外すこととなりすこぶる面倒なことなったと思いきや、リザーバータンクからのセンドホースとのクランプに緩みを発見。
下からのアクセスで締めることができ、とりあえず漏れは収まりました。

私の前にメンテナンスされた方、ねじ部分を下向きの位置で締めておいてもらえるともっと楽だったのですが(笑)
そのためラバーブーツ側は手持ちの工具では回せなかった画像。

2014/04/05

エンジン その2 Engine part2


組立式クランクシャフト(逆にコンロッドがボルト留めでない一体構造)については二輪では特別珍しいものではなく、私自身もコンロッドのベアリング交換のためクランクを取り出し内燃機屋に分解、組立、芯出しを依頼したことがあります。
しかし四輪で組立式クランクシャフトってあったでしょうか?

調べてみると四輪事業を始めたばかりのホンダS600なんかはそうだったみたい。2CVもBMWの二輪を参考にエンジンを開発したという通り、二輪との結びつきが強いのかもしれません。
(余談ですが最近の911GT3の火災事件はコンロッドのボルトが緩んだことで起こったものです。)

ただし二輪と違って万が一のエンジン腰下のトラブルはクランクアセンブリーでの交換となりそれなりのパーツ代がユーザーに求められたことでしょう。
現在はクランクアセンブリーの入手そのものが一般には困難でありクルマの寿命に直結することに。

GSのエンジンを総合的に考えると、僅かな歪みやズレに対する許容が低く、熱害に対する構造上のマージンも出力からすると相対的に低い設計と言わざるを得ません。
オーバーヒートは絶対に避けなければならず、高温多湿の中、エアコンを取り付けられた日本仕様のGSの信頼性の低さはこんなところにも由来しているのでは。